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翌日の午後6時ごろに電話がかかってきた
今のご時世、皆LINEだと言うのにこの人だけ
電話相手が誰かはもう分かっている

「はい」
『はぁッ♡...はぁッ、ちはぅ♡っ、これぇ、も、ッだめぇっ♡♡♡♡♡』
電話向こうから不自然な程息を荒らげる男
叔父だ
トイレにでも入って電話しているのだろうか

『ぁッ、もぅ♡、ゆるしへぇ!!、...中ゴリゴリぃッへぇ!?♡♡!、とめへぇっ!!ッ、』
耳元から淫らな声が聞こえてくる
そんなに卑猥な事大きめに言ってバレないの?

「それ、止めるもなにも、あんたが咥えて自分で動かしてるから無理だよ」
叔父の体内に入り込んだ異物はエネマグラだ
初めは楽だが、後々酷くなってくる代物
仕置としていい物だ
精々そんなもんで感じてろ

『もっ、イきそッ♡、...イっちゃぅう♡♡♡、!!、』
「今どうなってるの?」
叔父の必死の懇願を無視し、報告を待つ
唾を飲む音が小さく向こうからした

『ぁ、あ♡ぅ...ッ。な、中、が..沢山、ごりごりぃ、♡ッ!てぇッ、ちはぅっ、ち、はるぅッ!!も、...イくぅ!』
「そんなに声出して大丈夫?」

『...ッ...、いま、ぁ、みんな、...打ち上げ行っへ、ッ』
もう呂律も回っていない
仕事中律儀にずっと入れていたらしい
つらそー

「あっそう。取っ手掴める?」
ゴソゴソとスーツの重なった布が擦れる音がする
きっとボヤけた視界をフルに活性化させているだろう

『ぁ、ッはぁっ♡♡、...持った』
「うん。じゃあ頑張ってね」
そう言うと同時に、向こうの私を呼ぶ声も無視して通話を切る

精々そんなプラスチックと戦ってろ
ついでに三、四人ぐらいに犯されてこい
何度も電話が掛かってきたがマナーモードにして無視する

そして今夜、実家から彼の家に行く予定だ
夏休みに同好会やらサークルやらに所属していない私はただただ暇だ
叔父がいるから暇潰しは出来るが


そういえばそろそろ就職先探さないと
実家の会社に入ってもいいのだが、何せあの叔父がいる
そんな天敵が収容されている所に行くのは遠慮したい

母親の居る和室前に跪き、襖を開ける
流石に黙って就職先決めるのはちょっとまずい

「お母さん今いい?...私さ就職したいと思ってるんだけど、やっぱり家の会社に入んなきゃ駄目かな?」
ここで長女の特性が出てしまう
ムダに責任感が強い
増してや私は本家の長女(今は長男)なのだ

女なら嫁にでも何でもなって家から離れられるが、男になった弊害か、私が跡を継ぐ可能性がある

「ええ。嫌だと言うなら無理強いはしないけども。見学だけでも明後日行ってらっしゃいな」
あの人には私から伝えておくから
そう言って母親は花の茎を花鋏で切り、剣山に飾っていく
相変わらず優しいのか厳しいのか分からない

はぁ...と息を吐きながら襖を閉じて部屋に戻る
会社の人は皆いい人だ
父親がたまに会うと、部下の話を楽しそうに母親にしている所を見る

私にはまったく話しかけて来ないのだが
何ならこの私の代わり様を知らないのでは無いのだろうか
あ、よく考えたら次期取り締まり候補の叔父さん、私が男になって完全に女を孕ませられるようになったと知ったら絶対お父さんに候補外される

「お母さん!」
急いで襖を開け直す

「辞めてちょうだい。騒がないで」
「見学に行くのが私って事黙っててくれる?」

「良いわよ」
気のせいか、母の顔が楽しんでいる様だ
肝の据わった母親で良かったと今更ながら感じる
私が男になるという報告をした時も「自由にしなさいな」と背中を押してくれた
男運には恵まれないが女運には恵まれるのか

私はそのまま部屋に戻った
そして私はその日まで叔父のマンションに行くのを避けた
純粋に叔父への感じたことの無い罪悪感が腹の中に燻って気分が悪かった

父親からすれば自分の血の繋がった子に次を継がせたいだろう
幼い頃から何度も聞かされて来た

『お前が息子だったらまだ可愛がれたかもな』
この家では女は良い子を産むためだけの道具でしかない
古いと思われるかもしれない、否、古いのだ
何十代と笹本家を繋げて来ただけあって、家風を重視する傾向は昔から変わらない

そして母親に生け花を教え込まれながら当日を迎える
スーツを着て、バレないように首から『見学生』とだけ書かれたプレートを掛けた

①ー4: 概要
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